タイムドメインスピーカ TD307IIの改造.

ダイレクトエクストルーダシリーズも終わって、自分で好きなことをやっていただけなのに、なんか解放されたような気がしています.さて次に何をしようかと考えたときに、やっぱり3D プリンターでないと出来ないことがやりたいわけで、目に付いたのが目の前にあるスピーカー.わたしは良い音を聞き分ける能力にはまったく自信がないものの、音楽を聴くのは好きで、自分の気に入った音楽を垂れ流しにするために使っているスピーカーがあります.それはECLIPSE TD307IIというもので、メーカーは音響とはまったく関係なさそうな富士通です.富士通といえば、私の若かりし頃はパソコンメーカーとして有名でした.私が初めて買ったパソコンが富士通のFM-77 L4でしたね.大須のパソコンショップで注文してお金も払ったのにさっぱり出荷されずに、富士通の人が自宅まで謝りに来たのを覚えています.手土産に持ってきてくれたのはソフトバンクが出版していた「Oh! FM」でした.懐かしいなぁ.

まあ、そんな話はいいとして、TD307IIというスピーカーは、とても素直で長く聞いていてもまったく疲れない良いスピーカーだと思うのですが、悪くいえば高音も低音も出ないわけです.もう少しギターの弦をひっかく音とか、ベースが「ボィーン」っていう音とか聞けたらいいなと思い、スピーカーユニットを交換してみることにしました.ただ、TD307IIの筐体にハマるスピーカーユニットを選ぶという手法ではなくて、適当な安物のユニットを付けられるように、エンクロージャの方を改造しようと思います.もちろん3D プリンターを使ってです.


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これがいま使っているTD307IIです.タイムドメインスピーカの詳しい説明はネットにたくさん出ているのでそちらを参照してください.私が重要だと認識している点は、コーンの運動の反作用でユニットが振動するのを極力小さくするために、コーンに対してユニットの重さを格段(1000倍くらいのレベル)に大きくすることと、ユニットの振動がエンクロージャに伝わるのを防ぐために、ユニットとエンクロージャを浮かせるような構造にすると、そんなところでしょうか.ユニットに加えられる電気信号に出来るだけ忠実にコーンを動かし、逆にコーン以外は出来るだけ動かさないようにするということだと思います.あとは、音の反射屈折の影響を少なくするために、円筒形や卵形のエンクロージャにすることが多いです.


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これが、今回購入した「HiVi B3N」というユニットです.最初はfostexのユニットを買おうと思っていたのですが、amazonで見ているうちに、こちらの方が安いし評判もなかなかだったので、こちらに決めました.金属コーンという見た目も好きですし、なんかキンキンした高音が鳴りそうな気がします.


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TD307IIを分解しました.グランドアンカーと呼ぶにはあまりにも貧弱な感じです.まあメーカーの技術者がコストと性能を突き詰めた結果ですから、これでいいんでしょうね.


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グランドアンカーの重さは270g.材質はアルミ合金っぽい、軽めの金属です.


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スピーカーユニットと合わせても重さは650g.重さよりもエンクロージャへの固定方法の方が重要なんだろうか.ネジ止めで前後のエンクロージャに挟まれる部分には厚手のフエルトが巻いてあります.


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で、今回はこのフロントエンクロージャの形を参考にして、HiVi B3Nを取り付けるためのエンクロージャを設計して、3D プリンターで印刷します.


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印刷してます.材料はPETGです.


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出来ました.


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お約束通り、スピーカーユニットが当たるところにダイソーの耐震マットを切って貼ります.


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組み立てました.驚いたことに、今回は一発OKでした.まあ、耐震マットとか入れてるので、寸法は2mmくらいズレていてもOKなので.


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しかし、TD307IIの開発に心血を注いでいたエンジニアが見たら、卒倒しそうな形と色合いです.これほどにあわない取り合わせもなかなか無いんじゃないかな.


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いつもの位置に収めてみましたけど、まったく収まりが悪いです.違和感しかないな.


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そしてもう一個.


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私の座っている位置からだと、こんな絵面になります.金属コーンのカッコイイスピーカーユニットを使っているのに、そのことにまったく気がつかないほど、本来の趣旨とは関係ないところが自己主張をしてきます.

で、実際に鳴らしてみるとどうかというと、予想通り、ギターやバイオリンなどの弦の音やシンバルの音なんかが前に出て聞こえるようになりました.スピーカーの口径が大きくなっているので、今までより低音が強くなっていると思います.が、いろんな曲を聴いているうちに、なんか変なところで共振しているような気がしてきました.女性ボーカルの低い音が妙にこもる感じがして、なんかそこだけバケツに向かって歌っているような感じ.まあ、エンクロージャの容量とか考えずにスピーカーの口径だけ大きくしたんだし、どこでどんなふうに共振してても不思議はないです.周波数特性とか測れればいいんだけど、そんな機械持ってないし、でも音を出してマイクで測って画面表示すればいいんだから、簡単なものであれば自分でアプリぐらい作れるかな、いや、多分そういうアプリあるだろうと気がついて、AppStoreで検索してみたらやっぱりありました.

そのアプリで測ってみた結果は、
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こんな感じになりました.水色と紫がスピーカーの出力で、黄色いのが環境ノイズです.これだけ見ていてもよくわからないんですけど、


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これが、メーカーが出しているスピーカーユニットの特性.これを、


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ゴニョゴニョっと重ね合わせるとこうなります.たぶんKHzオーダーより上はあてにならないと思いますけど、注目すべきは150Hzから250Hzあたりの盛り上がり.これがポリバケツの底に向かって歌っているように聞こえる共振なんでしょうね.

まあしょうがないよなあ、とりあえずTD307IIにHiVi B3Nを付けられるようにしただけで、ちゃんと設計して作ったわけでもないし、いい音にするにはどういうふうに設計すればいいのかとかもわからないし.でもまあ、こんな感じで好きなユニットを使ったスピーカーの作成も3D プリンターで出来ることがわかりました.HiVi B3Nというユニットの音が自分の好みの範疇に入っていることもわかりました.いままで、スピーカーを自作するといえば、ホームセンターで木を切ってもらって、木工用ボンドで接着してと、普通に考えれば四角いものしか作れなかったわけですが、3D プリンターで出来るのであれば形にこだわる必要もありません.また少し、3D プリンターで出来ることが広がった気がします.