こういうのってけっこう珍しいのかな.

私が3Dプリンターで作っているモノって、一つのテーマみたいなものがあって、それを作り出すとそれにかかりっきりになって、「よし、終わり」って自分で思えるまでそればっかりやるみたいなスタイルが多いです.二つの違ったモノを平行して作るとか出来ないんですよね.昔っから仕事とかでもそうだったんですけど、普通の人が二つも三つもプロジェクトを平行して回しているのを見て、何でそんなことが出来るんだろうかって思ってました.そういう私が、だいぶ前から他のモノの合間を見て作っているモノがありまして、Apple Watchのケースというか、バンパーです.写真のタイムスタンプを見ると、一番古いのは去年の2月でしたから、もう1年以上もやってるんですね.
どうやったらうまく出来るのか、行き詰まった時はネットで検索したりするんですけど、「Apple Watch 3D printer」とか検索しても、Apple Watchのバンパーはなかなか出てこないんですよ.充電の台とか、Apple Watchそのもののモックアップとかはたくさんあるのに.3DプリンターでApple Watchのバンパーを作るのって珍しいことなんですかね.そんなに大きくないので印刷時間も短いですし、3Dプリンターで作るには良いテーマだと思うんですけどね.
そんなApple Watchのバンパーも最近できたモノは結構気に入って使っていますし、もうそろそろ完成でも良いかなと思える出来映えになってきたので、昔から現在までの流れを紹介しようと思います.


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記念すべき初品は結構ひどい出来映えですねえ.たしか、TPUとはまた違ったフレキシブルフィラメントの試供品を使ってると思います.Accessory-Design-Guidelines.pdf でダウンロードした図面から数字をひろって、まあ最初はサイズと位置関係の確認ですね.


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位置関係は、まあまあってところでしょうか.ちゃんとベルトをスライドして入れることも出来ます.


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画面は、ちょっとかぶってますね.ま、ここからスタートです.


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これは、右がPETGで、左はTPUで出来ています.右の形に単純に丸い外形を追加するとどうなるかやってみたのが左側の形です.


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まあこれは無いなっていうことがわかったのが収穫ですね.


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わかりづらいですけど、1つずつ形が違ってるんですよ.材料はPETGです.いろんな形を試しているところです.この頃はまだ、前面からパチンとはめ込む形ばかりですけれど、それだと使っている途中で服の裾とかで引っかけて外れることがあるので、何らかの形でネジ止めが必要だという考えに変わってきます.


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ネジ止めの第1号形状.


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左右から嵌合してネジでとめています.わかりにくいんですけど、この形状とこのベルトとの組み合わせだと、ネジ止め部分が邪魔になって、腕につける時に最初にベルトの先っぽを引っ張り出すのが非常に困難であることがわかりました.実際に作ってみて、使ってみないとわからない点です.


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形状の種類が多すぎるので途中をいくつも飛ばしますけど、この形状では、右と中央と左の部品に分けたモノを横方向でネジ止めしています.正面から見えている4つのネジは、電子マネーや自動改札を使う時に、まずネジの頭からぶつかるようにするためにつけたモノです.Apple Watchのバンパーのバンパー的な.


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ここまで来てやっと、左右方向ではなくて、前後方向で分けたモノをネジ止めする形になります.バンパーのバンパー的なネジを固定用にも使えばいいじゃんっていうことです.


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これ以降は全部前後分割になります.こうやって見ても、形状は現行品とほとんど変わってないなぁ.


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これは、さっきのに比べてガラスの周囲の枠が1mmほど出っ張っています.ぶつけた時のバンパーとしての保護能力を高めようとしているんですね.


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これは、さっきのに比べると、ネジまわりの樹脂の厚さを最小限まで薄くしたモノです.見た目の印象がどのくらい変わるかやってみたんですけど、ほとんど関係ないですね.


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色が変わりましたけど、材料は同じPETGです.これは、スピーカー穴の上部を斜めに切り欠いて、その平面部分に何か文字を入れようとしたモノです.最初は機体番号みたいなのをバーコードで入れたらカッコイイかと思ってバーコードの勉強もしたんですけど、バーコードって意外に情報密度が薄くて、意味の有るものを入れるには寸法が足りないことがわかり、あきらめました.


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これは、いままでApple Watchのバンパー作りで得た経験を活かして作った、iPhone SE2用のバンパーです.


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私のこだわりポイントである平置きした時にスピーカーの音を自分の方向に反射する形状.ネジはM3の六角穴付きキャップネジを使っています.


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背面の白い部分ですけど、4方向から挟み込まれて固定しているので、簡単に交換することが出来ます.



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こんなんとか、


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こんなんとか.


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さて、iPhone SE2のバンパーの経験を、Apple Watchのバンパーの方にも活用しました.今まではM2のナベネジを使っていたのですが、これはあえてM3の太いネジを使ってみたモノ.ネジの頭の大きなM3キャップネジで存在感をアピールしてみたのですが、いろんなところに引っかかったり擦れたり、あまり使い心地はよくありません.


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ということで、こちらはネジの向きを逆にして、ネジの頭が表に出ないようにしたモノ.使った感じはとても良かったです.だいぶん長いことこれを使っていたんですけど、気が付いたら隠れて見えないねじの頭部分が、汗でサビサビになってたんですよね.


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そして、ステンレス製の六角穴付きボタンネジという新しいネジを見つけて、それに合わせて作ったのがこれ.今も普通に使っている現行品です.サビませんし、ネジの頭のアピールが出来るのに、どこかに引っかかったりしないですし、ぶつかる時はネジの頭からぶつかっていきます.


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ネジの頭が1mm出るようにしてあります.ここら辺の微妙な形状も、自分で設計して自分で作ってこその細かな調整が出来ろところが気持ちイイ.


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こちらは、その後で作った最新型です.


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ネジの位置をずらすことで、ネジ部分の出っ張りで竜頭を保護することを目指しました.竜頭を下にして置いても大きく隙間があくんですけど、竜頭を回す時に邪魔で使いにくいんですよ、コレ.ダメなモノはダメですね.


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ということで、今は最新型の一つ前の形状を使っています.


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たぶん私がケースっぽいモノを作り出した最初が、このiPod shuffleのプロテクターだと思うんですけど、これが2005年のことです.それから15年ほどで、こんなに自由に自分の形を考えてそれを造形できる世の中になったんですねぇ.あのころは「こんなもの作った」ってblogに書くと、「ナニこれ、欲しい」っていう連絡が来たものです.でも今じゃそういう人達は「ナニこれ、自分も作ってみよう」に変わったんでしょうね.自分の作りたいモノを自分で作ることが出来る、そのハードルが年々下がっていく、本当に良い世の中になったモノだと思います.逆に、商売として物作りをしている人たちは、厳しい世の中になったものだと感じているんでしょうか.まあ、個人が遊びで作っているモノと比べればデザインとか品質とかぜんぜん違うんだし、関係ないのかな.高級品であればあるほど、自分で作ったモノなんてかなうわけがないのだし、逆に、¥100ショップで売っているモノを自分で¥100で作れるかって言えば絶対に作れないし、プロと個人は上手に棲み分けできているんでしょうね.