アタゴオルのCDが届きました.

この14日から公開される映画、「アタゴオルは猫の森」のサウンドトラックが届きました.米米クラブの石井竜也さんが作ったものです.これを聞いた感想を少し.

一曲目でMCタツヤが「アタゴオル森の夜祭り」を盛り上げるという設定になっているのですが、確かに原作のアタゴオルでも「アタゴオル森の夜祭り」なんてあったら、それはものすごい盛り上がりになると思います.でも、ヒデヨシがスーツ着てサングラスかけて舞台の上で踊りまくるという設定は、何か無理があるように思います.
それに、アタゴオルではどんなに盛り上がったとしても、電子機器は全く発達していないので、楽器の音は「ドンドン」とか「ジャンジャン」とか「プープー」とか、何ていうのか、アコースティックというかプリミティブというか、そういう音だけだと思うのですが、さすがにそれだけでCDを作るわけにもいきませんから、思いっきり現代風のポップな感じに仕上がっております(CD中ではスミレ博士のテーマが私のイメージに一番近いです).

また、曲中に「ワケワカランド アタゴオル」という歌詞が何度も出てくるのですが、これがこのCDの根底にあるのかなと思います.私はもう10年以上もアタゴオルを読み返していますが、猫が服を着て日本語をしゃべっていても、植物が異常に巨大化していても、宙に舞った音符をふんづけて空中を歩くことが出来ても、「なんだこのわけわからん世界は」と思ったことは一度もありません.確かに客観的に見れば異常な世界なのですが、それを異常と思わせずに、自然に世界に入っていけるのが、原作者のますむらひろしさんの素晴らしさではないかと思います.ボキャ貧なのでwikipediaの記述を引用すれば、「彼の絵がイラスト的に洗練されたものであり、また、過度の技法に走らず、かつ稚拙でもない絶妙のバランスの上に立っているという画風的要因」というものが大きいと思います.
そうはいっても、映画の音楽を作る、という作業の中では、作品を客観的に見る必要があるのかもしれません.でも、映画の一部である音楽が、自分自身で「ワケワカランド」などと言っていてはいけないと思います.

映画予告編での3Dアニメーションの出来栄えと、ヒデヨシの声がわかりました.さらにこのCDで、音楽の出来栄えもわかりました.はっきり言って、昔から私の持っていた「アタゴオル像」からは、かけ離れていく一方です.
先に書きましたとおり、ますむらさんは独特の画風を持っているのですが、これが3Dアニメ化されたことで、ほとんど失われています.さらに、アタゴオルでは「酒と音楽は生きることの一部」というようなノリがあるのですが、そのうちの音楽が原作とは全く違う雰囲気に仕上がっています.画風と音楽が違ってしまっては、これはほとんど違う作品といってもいいでしょう.

でも、落胆とかしているわけではありません.昔の角川映画のキャッチコピーに「読んでから見るか、見てから読むか」というのがありました.原作とはまた違ったアタゴオルをとっても楽しみにしています(ちなみに「アタゴオルは猫の森」も角川映画).