やっと出会えたバランタインのスコッチ.

私は現在、禁ビールダイエットをしていますが、それを継続させるために、いくつか例外をもうけています.そのうちの1つ、「ウイスキーはOK」.こんなことを許してしまうとダイエットの効果が無くなるんじゃないかと言われてしまいそうですが、そうでもなくて、私にとってはビールを連日2リットルくらい飲むことが悪いわけで、ウイスキーを2〜3杯飲んだからといって、ダイエット効果はさほど下がりません.実際体重は順調に減ってきています.

そういうことで、最近ウイスキーを飲む機会が多かったのです.今までは何となく、シングルモルトに偏っていたのですが、最近ブレンデッドもためしてみるようになりました.そんな中突然、私とスコッチウイスキーとの最初のコンタクトを思い出してしまいました.それは今から25年以上前、私が中学生の時です.その歳でスコッチウイスキーを初めて飲んだとかじゃないんですけどね.

その頃私は大藪春彦氏の世界に心酔していました.本屋の棚の端から端まで全部買い込んで読破していました.今の読書をまったくしない自分からは想像も出来ませんが、私にとって、伊達邦彦、北野晶夫、朝倉哲也は神のような存在でした.彼らのすることは全て正しく、合理的かつ完璧であり、100%私の心に受け入れられていました.車、オートバイ、銃器、ナイフ、酒、たばこ、そして女たち.どれ一つとして私の経験したことのない世界でした.私は想像力を総動員して、文章の一字一句に込められているニュアンスを嗅ぎ取り、少しでも自分の知らない世界を自分のモノとしたいと思っていました.特に伊達邦彦は大藪氏の生まれ変わりのような存在でしたから、思い入れも強かったです.

その伊達邦彦が、日本でまあ荒っぽいことをした後、大英帝国に逃れます.しかし、そのことを諜報機関に調べ上げられて、日本に強制送還しない代わりの条件として、大英帝国のスパイになるように強要されます.そのスパイ時代に、伊達邦彦が酒を飲むシーンがあります.まあ、酒を飲むシーン自体は数知れないほどあるのですが、私が今でも覚えている1つのシーンがあります.そのとき伊達邦彦が飲むのは「バランタイン」の「スコッチ」、「ストレート」で「ダブル」.これを水のように飲み干すのです.そしてこんなセリフを吐きます.
「ビールは水の代わりだ.舌からアルコールを抜くためのな.」

当時の私は「バランタイン」も「スコッチ」も「ストレート」も「ダブル」も、全然意味がわからなかったのですが、それがとてつもなくかっこいい行動なんだろうと信じていました.自分もそんなことが出来る大人になりたいと心から願っていました.
そんな昔のことをふと思い出して、今日、バランタインのスコッチを買ってきました.17年ものです.ストレートでダブル、グラスについで飲んでいます.味の方は、今までクセの強いシングルモルトばっかり飲んでいましたので、とても柔らかい印象を受けます.樽の香りが優しくて、後味に甘い味がとても長く続きます.確かに美味しいお酒ですね.

ということで、「バランタイン」の「スコッチ」を「ストレート」で「ダブル」で飲むという、中学生の私にとっては夢のような世界を実際体験してみて感じることは、大してかっこいいことでもないなと.かっこいい人が飲むからかっこいいのであって、腹の出たオッサンがTシャツ1枚で飲んでれば、どんな酒を飲んでもかっこわるいです.やっぱり伊達邦彦が飲むからかっこいいんでしょうね.こんなオッサンに飲まれるバランタインがちょっとかわいそうかもしれません.