ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら.

私がますむらひろしさんの「アタゴオル」が大好きであることは、以前にもここに書きました.で、ヒマにまかせてウィキペディアで「アタゴオル」を検索したら、以下のような文章が冒頭に書かれていました.

ますむらひろしのライフワークとも言えるシリーズで、猫と人間が同じ言葉を喋る空想世界を舞台としている。傍若無人な主人公ヒデヨシが巻き起こす数々の騒動を描く。後述のように主人公は良識の外に存在する怪物であるが、どこか憎めない存在であり、また一般常識に囚われないことで逆に物事の本質を明るみに出す役割を与えられている、いわゆるトリックスターである。こうした物語の基本構造は『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』や『パタリロ!』に極めて近い。

これを読んで思わず「へー」と感心してしまいました.私は「パタリロ」も同じく大好きであり、全巻持っています(まあ買っているのは嫁さんなんだけど).しかし、2つの作品ともよく知っている私は、ヒデヨシとパタリロに共通性はまったく感じていませんでした.言われてみて初めて気がつきました.でも、両者を同一視するのはちょっとどうかなと思えてしまいます.

両者ともにまわりの状況を考えずにメチャクチャをしまくるキャラクターだと言えばそうなんですけれど、どうもイメージがダブりません.何か根本的な部分で違いがあるような気がします.パタリロは、メチャクチャなことをメチャクチャだと承知の上で、わざとやっている.ヒデヨシは、まわりの状況を考慮しないで自分の思うとおりの行動を取るのが基本行動パターンで、結果としてまわりに被害を及ぼす.パタリロは、まわりに迷惑がかかるのを承知で行動しているが、ヒデヨシは、まわりに迷惑がかかることなどまったく考えていない、そんなような違いがあるのではないかと思います.

で、ウィキペディアでもう1つ引き合いに出されていた「ティル・オイレンシュピーゲル」っていったいなんやねん、ということで、この言葉をあらためてウィキペディアで引いてみると、「14世紀に北ドイツで存在していたとされる、伝説の奇人(トリックスター)」と出てきました.「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」という本があるらしい.amazonで検索をしてみると、確かにある.結構高い¥2300.とりあえず注文してみると、amazonにしては珍しく、翌日出荷ではない.2〜3週間かかるらしい.しばらく待っていると、本が届いた.読んでみる.あまり面白くはないが、ウィキペディアにも記述があったとおり、「日本で言うところの一休さんのトンチ」に近いものがある.ただ、非常に下品な話題も入っている.

読んでいくうちに1つのエピソードが目にとまりました.それはティル・オイレンシュピーゲルが、城主の命令で、お城のお抱え奇行師と、どっちが面白いことが出来るか競争するという話.二人ともおかしな身振りをしたり、おかしな顔をしてみたり、最終的にはお互いがお互いのまねしあいっこになってしまった時に、ティルはいきなりうんこを山盛りして、スプーンで半分に分けて、「これから私はこのうんこを半分食べるが、お前は残り半分を食べることが出来るか?」と言って、自分のうんこを半分食べ、相手が降参をするという話がありました.まあ、あまり品のいい話ではないのですが、そんなようなエピソードもたくさん入っています.

さてこの話を読んで、思い当たるシーンがありました.それは、ヒデヨシが欠食どらネコ団のカツラと、どっちがひどいものを食べられるか競争をするシーン.二人で毒キノコとか、はらいたドングリとか、ひどいものを食べた最後に、ヒデヨシが土を食べてみせ、それを見たどらネコ団が逃げ出すというシーンがあったのですが、それに似てるなぁ、と思いました.そして、パタリロでもフードバトラーと争うという話がありました.パタリロではうんこをテーマにした話もあります.パタリロが「衆人環視の中でうんこをするというのは、本当に肝っ玉のすわった人間にしか出来ない」と力説するシーン.

この話だけでは、非常に単純な比較しかできないのですが、ティル・オイレンシュピーゲルの話を間に置くと、ヒデヨシとパタリロの間にも関連性が無くもないなぁ、と思えてきました.興味のある方は一度ぜひ「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」読んでみてください.ただ、お金を出して買うほどの価値はないかと思いますので、出来れば図書館などで.