食欲大魔王・四国四万十川.

食欲大魔王は、ついに家族を引き連れて、四国は四万十市(旧中村市)の「いなか」という居酒屋に来てしまいました.そこで私が12年前に一度だけ味わったまま忘れられずにいたのが「カツオのたたき」です.これは、それまでに私が食べたカツオのたたきを全て否定するような味で、とにかくうまい.普通のカツオのたたきと何がどう違うのかはさっぱりわからないんだけれど、まったく違った味です.普通のカツオのたたきとは、名前が同じだけで別の食べ物と思った方がいいです.一度だけ食べたその味を忘れられずに、スーパーで買った、あるいは、ちょっとしたお店で注文したカツオのたたきを食べて、「本物はこんな味じゃないんだよなぁ」なんて時々つぶやいたりしていたわけです.しかし、本物を食べに行くのはとっても大変です.姫路からでも車で6時間以上かかるし、そもそも子供たちに食べさせても味がわからなきゃ意味がないしもったいないし.ということで、ずーっとガマンしていたのですが、先日、スーパーで買ったカツオのたたきを食べたときに、子供たちに「カツオ茶漬け」を教えてやったら、「うま?い!」と大好評.うちの子達も、ものの味がわかるようになってきたか、ということで、四国行きを決断したわけです.

で、家族を乗せて、車で高速道路を行きます.12年前には四国の高速道路はほとんどが対面通行で、しかも南国インターまでしか出来ていなかったのですが、今回はほとんどが4車線化されていて、高知をこえて須崎まで道路も延びています.さて、当初の予定通り、12時過ぎに立川パーキングエリアに入りました.到着して気がついたのですが、12年前のその時にも私はこのパーキングに寄っていました.ただ、朝早かったので店は開いておらず、トイレ休憩だけだったのですけど、たしかに見覚えがあります.


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まずは、ネットで下調べをしてあった「イノシシそば」を食べてみます.たしかに肉はイノシシのもの.でも、肉の味がそばの出汁にぜんぜん出ていないのがちょっと残念.そばはつなぎを使わない「十割そば」とかで、太くて短いのが特長とありましたが、実際太さは5mmくらいで、長さは5cmくらいしかありません.そばのようにツルツルと食べるわけにいかず、どんぶりに口を付けて、ハシでかき込むようにして食べます.これはどうなんだろうか、ネットで調べた情報からすると、ちょっと期待はずれか.


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外に出ると、牛肉の串焼きというのを売っていた.炭火で焼いてくれます.1本¥350.とりあえず1本もらって食べてみると、これが予想外にうまい.子供たちにも一口ずつ食べさせると、やっぱりうまいと好評.みんなで食べると串1本はあっという間になくなって、もう1本買いました.やっぱりおいしい.先にトイレを済ませて私だけ車に戻ってみると、子供たちが嫁さんにねだって、1人1本ずつ買ってもらってました.やっぱりおいしいらしい.

さて、高速をおりてから国道を西に向かって走ります.12年前はとても走りにくくて苦しかったことしか覚えていないのですが、今回はとても快適に走ることが出来ました.同じ国道でも、峠道の改良とか、市街地のバイパス化とか、道路の拡幅とかで快適に走れるようになっているのかもしれません.四万十市に到着して、四万十川の沈下橋なんぞを子供たちに見せたりして、予定通り5時半くらいにホテルサンルートにチェックイン.ホテル前のタクシーに乗り換えて、「居酒屋いなか」と行き先を告げます.

お店について、60歳くらいの女将さんに「どちらからおいでですか?」と聞かれるので「兵庫県の姫路からです」と.「それはまた遠いところを、どなたかのご紹介ですか?」というので「実は私12年前に一回だけこのお店に来たことがあるんですが、その時のカツオのたたきの味が忘れられなくて」というと、「それはそれは、最近の言葉でいえばリピーターというのですね」と返されました.


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とりあえず「カツオのたたき」と「川エビの唐揚げ」は頼むとして、何かオススメはありますかと聞くと、「もしよろしければアオサの天ぷらを試していただければ」ということで、「アオサの天ぷら」です.これは初めてですが、いきなり旨いです.塩か天つゆで食べるのですが、本能的に塩で行こうと決めて塩でいただきます.きれいな海で泳いでいるときに、岩にへばり付いている岩ノリをツメではぎ取って食べるととても美味かったりするのですが、そいつを10倍くらい濃くしたような旨さです.口の中一杯に磯の香りが広がる、というレベルを何倍も濃くしたような状態が楽しめます.これで¥300くらいなので、とてもお手軽です.子供たちにも好評でしたが、天つゆで食べる方がおいしいと言っていました.


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「川エビの唐揚げ」です.これはどこで食べても間違いなくおいしいです.たぶん四万十川には関係なく、例えば甘エビを素揚げにして塩を振って食べてもおいしいと思うのですが、そんな感じです.ただ、殻が固く歯ごたえがしっかりしているのと、身の味が濃いこと、サイズが妙に不揃いなところが特長でしょうか.


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「四万十川の天然ウナギの蒲焼き」です.四万十川の天然ウナギというのは実はとても数が少なくて、地元の方でも簡単には手に入らないんだそうです.私も「いなか」を訪れる2日ほど前に予約の連絡をしたときに「天然物のウナギは食べられますか?」と聞いたら、「今ちょうど天然物がありますので冷凍で取っておきましょうか」といわれるので「冷凍ではなくて当日獲れたものがいいんですけど」というと「天然物は毎日は獲れないので、獲れたときに冷凍をしておくしかないんですよ」と、そういうことのようです.現物が出てきて、まずサイズが小さい.国産養殖物の3/4くらいか、中国産の大きなものの半分くらいしかない.大きなアナゴといっても通るくらいのサイズ.そして実際食べてみると、「身が柔らかで、脂がのっていて」という、普通のウナギの蒲焼きとはまったく違うものでした.脂はのっておらず、身が固い.しかし、噛むほどに旨みがしみ出てくるので、なかなか飲み込むことが出来ない.長い間かみしめて、味の変化を楽しむような食べ物です.これも、名前は同じだけれど別の食べ物といってもいいです.


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「3種類の貝盛り合わせ」です.私も嫁さんも貝類は大好きなので、とりあえず何が出てくるかわからなかったのですが、頼んでみました.で、出てきたのがこれです.まあ、トコブシはわかりますけど、他の貝は、いってみれば磯に転がっている巻き貝を集めてきて塩ゆでしただけ、みたいな、そんなものです.みんな小さく、直径は3cmくらい.ツマヨウジでほじくり出して食べるのですが、味はなかなか、いい味がします.バイ貝なんかに比べると、ツマヨウジでくるっとほじくり出すだけで、身がツルッと全部出てくるので、食べやすいといえば食べやすい.どうしてこんなに身が取り出しやすいのかは不明です.


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「清水サバの刺身」です.サバの刺身というと「関サバ」が有名ですし、日本海側で普通のサバの刺身も食べたことがありますが、「清水サバ」というのは普通のサバとはまた違うようです.見た目にも、普通のサバにはない斑点みたいな模様がありますし、何しろ食べてみると味がぜんぜん違う.サバと言われないとサバとは思いません.というか、サバですか、これ.新鮮なのは当然ですが、とてもおいしいです.クセもありません.サバらしくないです.


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「カツオのたたき」です.見た目に特に違いは感じられません.しかし食べてみると、「そうそう、これこれ」という、昔感じたあの味です.普通のカツオのたたきと何が違うんでしょうか.嫁さんも、私が「本物はこういう味じゃないんだよなぁ」といっていた意味がよくわかったようです.とにかく旨い.普通に食べているものと何がそんなに違うのかさっぱりわかりませんが、はっきりと違いがわかるくらい旨いです.「カツオのたたき」の他にも「カツオの塩たたき」というのがあって、こっちは柚がきいた塩だれでいただくものです.こっちも食べましたが、こっちもおいしい.どっちがおいしいかといわれると困るくらい、どっちもおいしいです.


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「ゴリの唐揚げ」です.注文するときに、嫁さんに「ゴリってナニ?」と聞かれて、「ハゼみたいなので、川底にへばり付いている、3cmくらいの魚っていうイメージ」と言ったのですが、そのまんまのものが出てきました.このチビッコい魚たちをハシでガサッとつかんで、口に放り込んで、ゴシャゴシャと噛んでいると、おいしい味がジワーッと出てきます.ビールのアテに最高です.川エビもおいしいけれど、あなどれないぞ、ゴリ.


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最後は「かつお茶漬け」です.うちの子達は店に入った最初っから「かつお茶漬け、かつお茶漬け」とうるさかったのですが、「お茶漬けは最後に食べるの!」と言い聞かせて、最後まで引っ張りました.かつお茶漬け、文句なく旨いです.が、しかし、お茶漬けに関しては、スーパーで売っているカツオの刺身で作っても、そんなに差はないかなと思いました.いいかげん腹一杯になっていて、オマケにかなり酔っぱらっていたので、味覚がバカになっていたのかもしれません.

さて、他にも天然鮎の塩焼きや、なんだっけ、忘れましたけど、他にもいくつか頼んだのですが、食欲大魔王は、食べ物が出てくると、写真を撮る前にとりあえず食べてしまって、途中で気がついて写真を撮ったりしているので、ここに出ている写真のほとんどは、半分ほど食べた食べかけであり、写真に撮られることなく食べられてしまったものもいくつもあります.

今回、美味しいモノをたくさん頂けてうれしかったのはもちろんですが、子供たちが、ほとんどものを「おいしい」といって食べていたのがとてもうれしかったです.世の中には「魚が嫌い」とか「野菜が嫌い」とか、いろんな人がいると思うのですが、幸いなことに私も子供たちも極端な好き嫌いはなく、ほとんどのモノを美味しく頂くことが出来ます.食べ物というのは生き物の命をいただくわけですから、マズイのをガマンして食べるよりは、おいしくいただける方が幸せなことだと思います.そしてその幸せは生きているあいだじゅう続くわけですから、好き嫌いは無いほうが幸せですよね.

今回は大変美味しいモノをいただけたのですが、残念ながら非常に遠いので、そうちょくちょく行くわけにもいきません.何年後になるかわかりませんが、子供たちが私と一緒に出かけてくれるうちに、もう一回くらいは行ってみたいと思います.