私は播州弁は苦手です.

私は思うのですが、サービス業というのは、サービスをする方にも、もちろんもてなしの心が必要と思うのですが、サービスをされる方も、それに対する感謝の気持ちが必要なんではないかと思います.ホテルのドアを開けてくれる人に、「どうもありがとう」.ヘアカットをしてくれる美容師さんに、「どうもありがとう」.電話で呼び出したタクシーの運転手さんに、「わざわざすみません」.車を降りるときには「ありがとう」.そういう気持ちは大切なんではないかと思うわけです.

バーの店員さんとお客の関係でもそういうことはあると思うのです.バーに入るときより、出る時の方が少しだけ気分がよくなっていることに、「どうもありがとう」と感謝する必要があると思います.ところが姫路のバーの場合は、私にとってはここら辺がとても難しいのです.

客と店員の関係、年配者と若年者の関係、お金を払う方とお金をもらう方の関係、酔っぱらいと酔ってない人の関係.その間の会話というのは、いろいろな関係をふまえた上で、適当な言葉を選んで行われるものだと思うのですが、姫路の場合、使われる播州弁がとにかく強烈です.静かなバーはいいのですが、お客さんが酔っぱらって、盛り上がってくると、聞くに耐えないというか、耳が痛くなるような激しい言葉が飛び交います.でも、みんな怒っているわけではなくて、けっこう機嫌はいい.それはそれで、のりのいい播州弁ということで一般的に通る言葉なんでしょう.しかし私はちょっと耐えられません.

あるとき、マスターから「こちらのお客さんにお酒をついで差し上げて」と言われたアルバイト店員がちょっとまごついたとたんに、お客さんが「はよ酒つげ!アホ!ボケ!」と叫んだのです.私は実際に人がけんかをしているところはあまり見たことはありませんが、でも、私が今まで聞いた中では一番強烈な迫力のあるののしり言葉でした.それが、店内で普通に使われていることに二重のショックを受けました.

私は姫路に来て17年になりますが、まだ、どんな場面でどういう播州弁を使ったらいいのか、その状況判断が出来ないんだと思います.社長に対する播州弁、課長に対する播州弁、部下に対する播州弁、新人に対する播州弁、女子大生に対する播州弁、ヤンキーネーちゃんに対する播州弁.子供に対する播州弁.それぞれの場面で、その場の心理状態を反映して、的確な播州弁を使うのはとても難しいです.播州弁は、機嫌がよくなればなるほど、けんか腰になるような気がします.みんなが盛り上がれば盛り上がるほど、私の耳には痛い言葉になっていきます.だから、盛り上がっているバーからは、黙って去ることにしています.入った時より出た時の方がちょっとだけ気分が滅入ってます.